脊髄性筋萎縮症(SMA:Spinal Muscular Atrophy)は、SMN1遺伝子の変異により脊髄の運動神経細胞が変性・脱落する進行性の神経筋疾患です。筋力低下・呼吸筋麻痺・脊柱側弯などを特徴とします。

近年はヌシネルセン(スピンラザ)・オナセムノゲン アベパルボベク(ゾルゲンスマ)・リスジプラム(エブリスディ)などの治療薬が登場し、病状の進行が大きく変わるケースも増えています。

入浴介助においては、タイプ(重症度)・進行段階・呼吸サポートの有無によって対応が大きく異なります。このページでは、SMAのタイプ別に安全な入浴方法を解説します。


SMAのタイプ別特徴と入浴への影響

タイプ発症時期主な特徴入浴への主な影響
タイプ0胎児〜新生児期最重症・人工呼吸器依存集中的な医療管理が必要
タイプ1(ウェルドニッヒ・ホフマン型)生後6か月以内頸部・体幹の支持不能・呼吸筋弱化頸部支持・呼吸管理が必須
タイプ2生後6〜18か月座位可・歩行不可・側弯進行姿勢保持の工夫・脊柱保護
タイプ3(クーゲルベルク・ウェランダー型)18か月以降歩行可能だが次第に困難転倒防止・疲労管理

タイプ1(最重症型)の入浴介助

最大のリスク:呼吸管理

タイプ1では呼吸筋が著しく弱く、多くのお子さんが人工呼吸器(NPPV・TPPV)を使用しています。入浴中の呼吸管理が最も重要な課題です。

人工呼吸器装着中の入浴

  • 気管切開(TPPV)がある場合は、専用の防水カバーを使用するか清拭に変更する
  • 非侵襲的換気(NPPV/マスク型)の場合は、マスクを外せる時間が限られるため、入浴は清拭・シャワーの短時間ケアにする
  • 入浴中はSpO2モニタリングを継続する
  • 訪問看護師が同席しないタイミングでの浴槽入浴は原則として行わない

頸部支持

  • 頸部筋力がないため、必ず頸部を支えた状態でケアを行う
  • シャワーで頭を洗う際は、頭部の重さをすべて介助者が支える
  • 洗髪は前屈・後傾を避け、水平に近い姿勢で行う

入浴の代替としての清拭

  • 浴槽・シャワー浴が難しい状態では、ベッドサイドでの温タオル清拭が安全で実用的
  • 皮膚・会陰部・腋窩・首の後ろの清潔管理を重点的に行う

タイプ2の入浴介助

タイプ2のお子さんは、座位は保持できますが歩行はできません。脊柱側弯が進行することが多く、姿勢保持への注意が必要です。

姿勢保持の工夫

  • バスチェア・シャワーチェアを使用し、体幹を安定させる
  • 側弯が進行している場合は、背中が曲がった状態に合わせた体位調整が必要
  • チェアのサイズ・背もたれの角度が合っているか定期的に確認する

脊柱への配慮

  • 入浴中に急に体が傾いたり、バランスを崩さないよう常に支える
  • 体を洗う際の動作で「ねじり・前屈」が過度にならないよう注意する
  • 側弯が強い場合は、理学療法士(PT)に「入浴中の体位」についてアドバイスをもらう

疲労への配慮

タイプ2のお子さんは疲れやすく、入浴の疲労が呼吸にも影響します。

  • 入浴時間は15〜20分以内を目安にする
  • 入浴後は横になって休む時間を確保する
  • SpO2が低下する場合は入浴を短縮・中断する

タイプ3の入浴介助

タイプ3のお子さんは若年期には歩行可能ですが、筋力低下は進行します。

転倒防止

  • 浴室の滑り止めマット・手すりを整備する
  • 浴槽のまたぎ動作をサポートする
  • 浴槽内での立ち上がりは必ず介助する

疲労管理

  • 自立した入浴が可能でも、疲れて転倒するリスクを考慮する
  • 状態が悪い日はシャワーチェアを使用し、疲労を最小限にする

進行に合わせた方法の変更

  • 「以前は一人で入れた」状態から変化が出た場合、早めに介助・福祉用具の見直しを行う
  • 「できる」から「難しくなった」への移行を本人が受け入れやすいよう、丁寧にコミュニケーションをとる

新薬治療を受けている場合の注意点

ヌシネルセン・リスジプラムなどの治療を受けているお子さんでは、筋力が改善・維持されているケースがあります。ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 治療前の状態と現在の状態が大きく異なる場合がある。定期的に入浴方法を見直す
  • 感染リスクへの注意:免疫低下がある薬(一部の治療薬)を服用中は感染予防の観点から入浴に関して主治医に確認する
  • 定期受診時に「入浴できているか・困っていることはないか」を医師に伝える

よくある質問

SMAタイプ1で人工呼吸器を使っています。入浴は完全にあきらめるべきですか?

あきらめる必要はありません。ただし、安全に行うためには訪問看護師との同席・医師の指導のもとで方法を検討する必要があります。清拭・足浴などから始めることをお勧めします。

側弯が強く、どのシャワーチェアでも体が安定しません。

側弯に対応したカスタムシートや体幹固定具を使用する必要がある場合があります。作業療法士(OT)・理学療法士(PT)に「SMAの側弯に対応した入浴姿勢」を相談してください。

以前より疲れやすくなり、入浴後にSpO2が下がることがあります。

入浴時間を短縮し、清拭への部分移行を検討しましょう。また、SpO2低下の傾向は主治医に必ず報告してください。呼吸管理の見直しが必要な場合があります。


スイトルボディがSMAに向いている理由

スイトルボディのベッドサイドケアは、体幹・頸部の支持が難しいSMAのお子さんに適した仰臥位でのケアが可能です。

  • 横になった状態でケアができるため、体幹・頸部の支持が容易
  • 呼吸器との干渉が少なく、気道管理をしながらケアができる
  • 浴槽・シャワー浴が困難になった段階でも清潔ケアを継続できる

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*本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。入浴方法の詳細については、担当の訪問看護師・主治医にご相談ください。*