「妻に任せっきりで、入浴介助に入ったことがない」「やってあげたいけど、やり方がわからなくて怖い」「一度失敗してから、自信がなくなってしまった」
そんなお父さんに向けて書いた記事です。
障害のある子どもの入浴介助は、初めて見ると「自分にできるだろうか」と思うほど複雑に見えます。でも、基本を知り、少しずつ一緒にやってみることで、多くのお父さんがパートナーとしてケアに参加できるようになります。
このページでは、入浴介助が初めてのお父さんに向けて、基本の動作・安全なやり方・最初の一歩の踏み出し方を解説します。
なぜお父さんの参加が大切なのか
在宅で障害のある子どもを育てる家庭では、入浴介助をはじめとした日常的なケアの多くを母親が担っているケースが多くあります。その結果、母親の体への負担・精神的な疲弊・「一人で抱えている」という孤独感が蓄積しやすくなります。
お父さんが入浴介助に参加することには、以下のような意味があります。
介護負担の分散
週に数回でも入浴介助を担うことで、パートナーの身体的・精神的負担が大きく軽減されます。「腰が限界」「毎回怖い」という状態から解放されます。
子どもとの時間
入浴介助はお子さんと1対1で触れ合える貴重な時間でもあります。肌の感触・表情の変化・声のトーンを感じ取ることで、子どもの状態への理解が深まります。
緊急時のバックアップ
パートナーが体調不良・入院・外出しなければならないときに、お父さんが一人でケアを担える状態であることは、家族全体のセーフティネットになります。
まず「見る」ことから始める
いきなり一人でやろうとしなくてよいです。最初のステップは「一緒に入って、見て、覚えること」です。
STEP 1:パートナーの介助を隣で見学する
「次の入浴のとき、隣で見せてほしい」と声をかけてみましょう。どこを支えているか・どの順番で洗っているか・どんな声かけをしているかを観察します。
STEP 2:一部だけ担ってみる
「タオルを渡す」「体を支える片方を持つ」「最後に保湿剤を塗る」など、一部だけ参加します。いきなり全部やる必要はありません。
STEP 3:一緒に全体をやってみる
慣れてきたら、パートナーに見てもらいながら全体の流れを試してみます。
STEP 4:一人でやってみる
「次の土曜の入浴は自分でやってみる」と決めて、一人で担当します。最初は不安でも、一度できると自信がつきます。
基本の動作:体の支え方
障害のある子どもを支えるときに最も重要なのが「体の支え方」です。誤った支え方は、お子さんへの負担・介助者の腰への負担につながります。
首・頭の支え方
頸部の支持が難しいお子さんでは、頭がぐらつかないよう「手のひら全体」で後頭部を支えます。
- 指だけでつまむような持ち方は不安定でNG
- 手のひら全体を頭にあてて、水平を保つように支える
- シャワーで頭を流すときは、必ず頭部を支えた状態で行う
体幹の支え方
筋緊張が低い・体幹が安定しないお子さんでは、以下の方法で支えます。
- 浴槽の中:背中を浴槽の壁にもたれさせ、一方の腕で体幹をしっかり支える
- シャワーチェアの上:横から体幹を抱えるように支え、倒れないようにする
- ベッドサイド(清拭):横向きのときは背中から支えて体位を安定させる
持ち上げ・移乗
浴槽への出入りや移乗が必要な場合、腰への負担が大きい動作です。
- 必ず膝を曲げて持ち上げる(腰を曲げて持ち上げるのはNG)
- お子さんを体に引きつけて、自分の体幹に近い位置で支える
- 二人で行う場合は「せーの」で息を合わせてから動く
- 体が重くなってきたら、福祉用具(スライディングボード・入浴用リフトなど)の導入を検討する
洗い方の基本手順
一般的な手順の例です。お子さんの状態・使っている設備によって異なります。パートナーや訪問看護師から「うちの子のやり方」を教えてもらいましょう。
① 温度確認
お湯の温度を温度計で確認(38〜39℃が目安)。シャワーを体に当てる前に自分の腕の内側で温度を確認する。
② 顔を拭く
濡らしたタオルで顔を優しく拭く。目・口周りは丁寧に。
③ 頭を洗う
頭部をしっかり支えながらシャンプー。シャワーは顔にかけない。目に入らないよう前傾みを作らない。
④ 体を洗う(前面)
首・胸・腹部・腕・手のひら・指の間。石鹸をよく泡立てたスポンジで優しく。
⑤ 体を洗う(背面・後面)
横向きに体位変換して、背中・臀部・脚の後面を洗う。
⑥ 陰部・臀部
皮膚トラブルが起きやすい部位。やさしく丁寧に洗い、すすぎをしっかり行う。
⑦ すすぎ
石鹸が残らないよう、全身をしっかりすすぐ。
⑧ 浴槽に浸かる(行う場合)
シャワーのみの場合はスキップ。浴槽では短時間(5〜10分)で済ませる。
⑨ 体を拭く
やわらかいバスタオルで「押さえるように」拭く(こすらない)。首のしわ・腋窩・鼠径部・指の間など、水分がたまりやすい部位を特に丁寧に。
⑩ 保湿・スキンケア
全身に保湿剤を塗る。医療的な処置(ストーマケアなど)があれば訪問看護師の指導通りに行う。
医療的ケアがある場合の心構え
気管切開・胃ろう・人工呼吸器など医療的ケアがある場合、最初は「触れてよいのか」という不安があるかもしれません。
大切な考え方:「わからないことを正直に言う」
「どこを触ってよいか教えて」「これは大丈夫?」と聞くことは弱さではありません。正直に聞くことがお子さんの安全につながります。
訪問看護師に教えてもらう
担当の訪問看護師に「入浴介助を一から教えてほしい」と依頼できます。プロが直接教えてくれる機会を積極的に活用しましょう。
「見ているだけでは覚えられない」と知る
入浴介助は、実際に手を動かして覚えるものです。完璧にできなくてよいので、やってみることが大切です。
よくある「お父さんの不安」への回答
「力が強すぎて、子どもを傷つけてしまいそうで怖い」
力の加減が心配な場合は、まず清拭(タオルで拭くだけ)から始めてみましょう。お子さんの体の感触・反応を感じ取りながら、徐々に力加減を覚えていけます。
「仕事があって平日は難しい。休日だけでも意味がある?」
週1回でも十分に意味があります。「土曜の入浴は自分が担当する」と決めるだけで、パートナーの週1回分の負担が消えます。継続することが大切です。
「妻のやり方と違うことをして怒られた」
お子さんのケアには「正解の手順」があり、それを守ることが大切です。「違うと思ったら教えて」という姿勢で、お互いに共有し合いましょう。怒りではなく「情報共有」と受け取ることが関係を守ります。
「子どもがパパには入浴させてくれない」
慣れない人からケアを受けることへの抵抗は、障害のあるなしに関わらず子どもに自然なことです。最初は「見ているだけ」から始め、声かけや触れ方を通じて「この人は安全だ」と体で覚えてもらう時間が必要です。焦らず続けましょう。
パートナーへの言葉がけ
入浴介助に参加するだけでなく、日常の言葉がけも大切です。
- 「今日の入浴、どうだった?」と終わった後に聞く
- 「最近きつそうだったから、今週末は自分がやる」と先に宣言する
- 「うまくできなかった部分、教えてくれると助かる」と改善の意欲を見せる
パートナーが「一人じゃない」と感じることが、家族全体の精神的安定につながります。
スイトルボディはお父さんにも使いやすい
スイトルボディのベッドサイドケアは、浴室への移動・体の持ち上げ・浴槽への移乗が不要なため、入浴介助に慣れていないお父さんでも比較的取り組みやすい方法です。
- 浴室という「滑る・狭い」リスクのない環境でケアができる
- ベッドで横になった状態でケアするため、体の支えが安定しやすい
- 「清拭ではなく、ちゃんと洗えた」という達成感が持てる
まずはご相談ください
入浴介助の始め方・製品についてのご相談はお気軽にどうぞ。お父さんからのご連絡も大歓迎です。
*本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。入浴介助の具体的な方法は、担当の訪問看護師にご相談・ご指導いただくことをお勧めします。*

