
「酸素チューブをつけたままお風呂に入れていいの?」「入浴中にSpO2が下がったらどうする?」「シャワーと清拭ではどちらが安全?」
在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)を使っているお子さんを介護されているご家族から、こうした疑問をよくいただきます。
在宅酸素療法があるお子さんの入浴は、酸素管理という追加の課題があるため慎重な判断が必要ですが、正しい知識と準備があれば、在宅でも安全に清潔ケアを行うことができます。
この記事では、在宅酸素療法を使っているお子さんの入浴・シャワー浴・清潔ケアの方法と注意点を解説します。
在宅酸素療法とは
在宅酸素療法(HOT)とは、慢性的な低酸素血症があるお子さんが、自宅で酸素吸入を行う治療法です。
酸素濃縮器または液体酸素装置から酸素カニューレやマスクを通じて酸素を吸入します。重症心身障害・先天性心疾患・慢性肺疾患・神経筋疾患などのお子さんに使用されています。
入浴で注意が必要な理由
在宅酸素療法があるお子さんの入浴において特に注意が必要な点は以下の3つです。
① 入浴中はSpO2が低下しやすい
入浴は体への負荷が大きく、健常者でもSpO2(血中酸素飽和度)が一時的に低下することがあります。平常時から酸素が必要なお子さんにとって、入浴中の酸素管理は特に重要です。
② 酸素チューブ・カニューレへの水かかりリスク
シャワー浴・入浴中に酸素カニューレや接続チューブが濡れると、感染・機器トラブルの原因になる可能性があります。
③ 酸素装置との距離・チューブの長さ
入浴中は通常より酸素装置から離れた場所に移動するため、チューブの長さが十分かどうかの確認が必要です。また、延長チューブを使う場合は酸素供給量の確認が必要です。
入浴前に必ず確認すること
在宅酸素療法があるお子さんの入浴前には、以下を必ず確認してください。
① 担当医・訪問看護師への確認
「入浴中も酸素が必要か」「酸素流量の調整が必要か」「入浴時間の上限はあるか」を必ず担当チームに確認してください。お子さんの疾患・状態によって判断が異なります。
② パルスオキシメーターの準備
入浴中・後のSpO2をモニタリングするために、防水対応のパルスオキシメーターを準備してください。入浴中にSpO2が基準値(担当医が設定した値)を下回った場合は、すぐに入浴を中止してください。
③ 酸素チューブの長さと接続確認
浴室まで届く長さのチューブが確保されているか確認します。延長チューブを使う場合は、適切な酸素流量が維持されているかを確認してください。
④ 吸引器の準備
在宅酸素と気管切開を併用しているお子さんは、入浴前後に吸引が必要な場合があります。浴室のすぐ外に吸引器を置いておいてください。
【方法①】入浴(湯船に浸かる)
主治医が許可している場合のみ行ってください。
注意点
- お湯の温度は38〜39℃程度のぬるめに設定する(高温は心肺への負担が増す)
- 入浴時間は5〜10分を目安に短くする
- 入浴中はSpO2を継続的にモニタリングする
- 酸素カニューレは入浴中も装着したまま行う(担当医の指示に従う)
- 浴室内の換気を適切に行い、蒸気がこもらないようにする
- 初回は必ず訪問看護師が立ち合いのもとで行う
【方法②】シャワー浴
湯船より体への負荷が少なく、管理がしやすいシャワー浴は、在宅酸素療法があるお子さんにとってより安全に行いやすい方法です。
注意点
- シャワー温度は38〜40℃のぬるめに設定する
- 酸素カニューレ・チューブに直接シャワーが当たらないようにする
- シャワー時間は10〜15分を目安に短めにする
- SpO2をモニタリングしながら行う
- 体を洗う順番を事前に決め、手早く行う
酸素カニューレの取り扱い
シャワー浴中に酸素カニューレを装着したまま行うか、一時的に外すかは担当医の指示に従ってください。一時的に外す場合は、SpO2の変動に特に注意が必要です。
【方法③】清拭
体調が優れない日・SpO2が不安定な日・入浴後の体力消耗が心配な日には、清拭が最も安全な清潔ケアの方法です。
在宅酸素療法があるお子さんにとって、清拭は「入浴できない日の代替手段」としてではなく、「体調・状態に合わせた清潔ケアの選択肢のひとつ」として位置づけることが大切です。
清拭の具体的な手順・部位別の注意点については障害児の清拭のやり方|正しい手順・部位別注意点を詳しく見るをご覧ください。
【方法④】介護用洗身用具でベッドサイドケア
「シャワー浴は体への負荷が心配」「浴室まで移動させることが難しい」という場合の選択肢として、ベッドサイドで全身を洗える介護用洗身用具があります。
スイトルボディは、お湯の噴射と汚水の吸引を同時に行う介護用洗身用具です。
在宅酸素療法があるお子さんへの活用イメージ
- ベッドから移動しないため、体への負荷・SpO2への影響を最小限にできる
- 酸素装置との距離を変えずに洗身できるため、チューブ管理が容易
- 洗いたい部位にピンポイントで使えるため、カニューレ・チューブ周囲を避けながら使える
- 入浴中のSpO2急変リスクがない環境でケアできる
在宅酸素療法があるお子さんへの使用については、事前に必ず主治医・訪問看護師に確認してください。
入浴後に気をつけること
在宅酸素療法があるお子さんの入浴後は、以下を確認してください。
- SpO2が安定していることを確認する(低下が続く場合は担当医・訪問看護師に連絡)
- 体温が急激に下がらないようにする(特に冬場)
- 入浴による疲労から体調変化がないか30分程度観察する
- 酸素カニューレ・チューブが濡れていれば清潔なガーゼで拭き取る
よくある質問
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在宅酸素を使っている場合、入浴は毎日できますか?
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お子さんの疾患・SpO2の安定度・体力によって異なります。毎日の入浴が可能なお子さんもいれば、週2〜3回が適切なお子さんもいます。担当医と「どの程度の頻度・時間が適切か」を相談して決めてください。
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入浴中にSpO2が下がったらどうすればいいですか?
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事前に担当医から「何%以下になったら中止する」という基準値を確認しておいてください。基準値を下回ったら直ちに入浴を中止し、体を温めながら安静にさせ、SpO2の回復を確認してください。回復しない場合や意識・呼吸に変化がある場合は救急連絡をしてください。
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酸素流量は入浴中に増やす必要がありますか?
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担当医の指示に従ってください。入浴中は酸素需要が増えるため、流量を一時的に増量するよう指示されるケースがあります。自己判断で変更せず、必ず事前に確認してください。
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気管切開と在宅酸素を両方使っている場合の入浴はどうすればいいですか?
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複数の医療的ケアが重複する場合は、個別の管理事項が多くなります。必ず訪問看護師と具体的な入浴手順・中止基準を確認し、初回は必ず立ち合いのもとで行ってください。気管切開の入浴については気管切開のある子どもの入浴ガイド|水が入らないための対策と安全に体を洗う方法もあわせてご覧ください。
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在宅酸素があっても訪問入浴サービスは使えますか?
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在宅酸素療法があるお子さんに対応している訪問入浴事業者はあります。看護師が同行するサービスを選ぶことで、入浴中の酸素管理も対応してもらえる場合があります。担当の相談支援専門員に相談してください。
まとめ
在宅酸素療法があるお子さんの清潔ケアは、適切な準備と酸素管理を行うことで在宅でも安全に行えます。
- 入浴前に必ず担当医・訪問看護師と入浴可否・方法・中止基準を確認する
- 入浴中はパルスオキシメーターでSpO2を継続モニタリングする
- 体への負荷が少ないシャワー浴・ベッドサイドケアを積極的に活用する
- 体調が優れない日は清拭・洗身用具でのベッドサイドケアを選ぶ
「うちの子の在宅酸素の状態でスイトルボディは使えますか?」などのご相談はお気軽にどうぞ。
医療的ケア別の入浴Q&Aは医療的ケア児のお風呂でよくある疑問に答えますもあわせてご覧ください。
*本記事は一般的な情報提供を目的としています。お子さんの酸素療法の管理については、必ず主治医・訪問看護師の指示に従ってください。2026年5月時点の情報に基づいています。*


