二分脊椎(脊髄髄膜瘤・二分脊椎症)は、胎生期に脊椎の一部が閉鎖されないために生じる先天性の疾患です。脊髄・神経の障害程度により、下肢麻痺・膀胱直腸障害・皮膚感覚の低下・水頭症を合併することが多くあります。

入浴介助においては、皮膚感覚がない部位の熱傷・褥瘡リスクの管理・排泄ケア(導尿)との連携・水頭症シャントの管理が特に重要です。このページでは、排泄ケアを含む包括的な入浴介助の方法を解説します。


二分脊椎の主な特徴と入浴への影響

特徴入浴への影響
下肢の感覚麻痺熱傷・外傷を感じられないリスク
膀胱直腸障害入浴中の排泄対応・導尿タイミング
褥瘡リスク感覚のない部位への圧迫・摩擦
水頭症・VP/VAシャント水圧・感染リスクへの注意
脊柱側弯・股関節脱臼体位保持・移乗の工夫
皮膚の脆弱性(手術痕)手術部位の保護

最重要:皮膚感覚がない部位の熱傷・外傷予防

二分脊椎のお子さんは、病変レベル以下の皮膚感覚が低下・消失しています。これは「熱くても気づかない」「圧迫されても痛くない」ことを意味します。入浴時の熱傷・外傷が重篤な問題につながる可能性があります。

お湯の温度の確認

  • 必ず温度計でお湯の温度を測る(38〜39℃を目安)
  • 「手で測って大丈夫」と感じる温度でも、お子さんの足・臀部には熱すぎる場合がある
  • シャワーのお湯も、体に当てる前に介助者の腕の内側(肘の内側)で温度を確認する

感覚のない部位の確認

  • 足首・ふくらはぎ・臀部・仙骨部位は特に感覚がない場合が多い
  • 入浴中・入浴後に発赤・水疱・傷がないか必ず視診する
  • 洗体時にスポンジを使い、強くこすらない(摩擦性外傷を防ぐ)

浴槽・シャワーチェアの素材確認

  • 固い素材の浴槽やシャワーチェアが骨突出部(仙骨・坐骨・踵)を圧迫しないよう、クッションやゲル素材のカバーを使用する
  • 踵・踝(くるぶし)が浴槽の底に当たらないよう毛布・タオルをあてがう

入浴と排泄ケア(導尿)の連携

二分脊椎のお子さんの多くは、膀胱直腸障害により自排尿が困難で、清潔間欠導尿(CIC)を行っています。入浴と導尿のタイミングを計画的に組み合わせることが清潔管理の効率を高めます。

推奨される順番

導尿 → 入浴(または清拭)→ 皮膚ケア

入浴前に導尿を行うことで、入浴中の尿漏れリスクを減らせます。入浴後は皮膚が清潔な状態でスキンケアができます。

入浴中の排泄への対応

  • 完全な排尿コントロールが困難な場合は、入浴を短時間で済ませる
  • 排泄が予測される場合は、入浴前に導尿を確実に行ってから入浴する
  • 「入浴中に排泄してしまった」場合は、シャワーで洗い流し、清潔を保つ。責めない

会陰部のケア

  • 二分脊椎のお子さんは会陰部の感覚が低下していることが多く、皮膚炎・感染リスクが高い
  • 洗体時は会陰部を丁寧に(ただし強くこすらず)洗い、よく拭き取る
  • 保湿・バリア機能ケア剤(ワセリンなど)を入浴後に塗布する

水頭症・シャントがある場合の注意点

水頭症のVPシャント(脳室-腹腔シャント)またはVAシャント(脳室-心房シャント)が挿入されている場合、注意事項があります。

  • 水圧への注意:深い浴槽(肩まで浸かる入浴)での水圧がシャント圧に影響する場合があります。主治医に「浴槽の深さ・入浴の可否」を確認してください
  • 感染リスク:シャント感染(頭痛・発熱・嘔吐)の症状がある場合は入浴を避け、すぐに受診する
  • 頭部の洗髪:シャント留置部位(頭部・腹部・頸部)の皮膚を洗う際は、傷・発赤がないか確認する

褥瘡予防と入浴の組み合わせ

入浴・清拭は褥瘡予防の重要な機会です。

入浴時の褥瘡観察チェックポイント

  • 仙骨部(お尻の中心)
  • 坐骨部(座ったときに体重がかかる部位)
  • 踵(かかと)
  • 内・外踝(くるぶし)
  • 脊柱に沿った背部
  • 手術痕・装具が当たる部位

皮膚ケアの手順

  1. 感覚のない部位を丁寧に洗浄(石鹸をよく泡立て、スポンジで優しく)
  2. ぬるま湯でしっかりすすぐ
  3. やわらかいタオルで押さえるように拭く(こすらない)
  4. 保湿剤を塗布する
  5. 発赤・傷・褥瘡の初期変化があれば写真で記録する

脊柱側弯・股関節への配慮

二分脊椎では側弯・股関節脱臼を合併することがあります。

  • 浴槽への移乗時に股関節・膝・足首に過度な力をかけない
  • 体を「引っ張る」「ねじる」動作は避ける
  • 理学療法士(PT)に「安全な移乗方法」を教わっておく

よくある質問

下半身の感覚がないため、シャワーの温度が熱いかどうかわかりません。どう確認すればよいですか?

必ず温度計を使い、38〜39℃を目安にしてください。お子さん自身が「熱い」と言えない場合は、皮膚の反応(赤み・腫れ)を注意深く観察することが唯一の指標です。

導尿と入浴の両方を一人でやるのが大変です。

訪問看護師に「導尿と入浴の両方を同一の訪問時間に対応してほしい」と依頼できます。訪問時間を長めに設定してもらうことで対応できる場合があります。

手術痕が浴槽の壁に当たって傷になってしまいました。

手術痕が当たる部分にクッション材・タオルを当て、直接接触しないようにしましょう。また、手術痕に感覚がない場合は特に「傷が深くなるまで気づかない」リスクがあるため、毎回の観察が重要です。


スイトルボディが二分脊椎に向いている理由

スイトルボディのベッドサイドケアは、仰臥位でのケアが可能なため、感覚のない部位への圧迫・熱傷リスクをコントロールしやすく、二分脊椎のお子さんに適しています。

  • ベッドに横になった状態で皮膚全体を観察しながらケアができる
  • 水温を介助者が常に管理できる
  • 感覚のない部位に直接熱い湯がかかるリスクが低い

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*本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。入浴方法の詳細については、担当の訪問看護師・主治医にご相談ください。*