てんかんのある子どもの入浴介助と発作リスク対策についてクリニック相談室で優しく微笑むピンクカーディガン姿 of 女性アドバイザーの横長写真

てんかんのある子どもの入浴介助でいちばん怖いのは「お湯の中での発作」です。浴槽の中で発作が起きると、たとえ浅いお湯でも意識を失った状態では溺水に至る危険があります。「毎回お風呂が怖い」「目を離せないので介助がとにかく疲れる」という声が多く届いています。

このページでは、てんかんのある子どもの入浴時のリスクと安全対策、万一発作が起きたときの対応手順、そして浴槽に入らない全身ケアの選択肢についてわかりやすく解説します。

※ 入浴方法については必ず主治医(神経内科・てんかん専門医)の指示に従ってください。


てんかんのある子どもの入浴で起こりうるリスク

溺水リスク

てんかん発作は予告なく起こることがあります。浴槽の中で発作が起きた場合、たとえ少量のお湯でも意識を失った状態では溺水のリスクがあります。てんかんのある方の溺水事故の多くは入浴中に起きているとされており、入浴時の安全管理は非常に重要です。

特に以下の発作タイプは入浴中の危険度が高くなります。

  • 強直間代発作(大発作):全身の筋肉が硬直し、その後けいれんするタイプ。意識を失うため、浴槽内での溺水リスクが最も高い
  • 欠神発作:数秒間意識が途絶えるタイプ。短時間のため見逃しやすいが、浴槽の中では危険
  • 脱力発作(アトニー発作):突然全身の力が抜けるタイプ。浴槽内で頭部が沈む原因になりやすい

転倒・転落リスク

発作の種類によっては、突然の脱力・転倒がともなう場合があります。濡れた浴室では床が滑りやすく、転倒したときの衝撃も大きくなります。特に浴室の段差・浴槽のふちは頭部を打つリスクがあるため、入浴環境の整備が重要です。

  • 浴室の床に滑り止めマットを敷く
  • 浴槽内にも滑り止めシートを使用する
  • 浴槽のふちや壁の角にクッション材を設置する

過呼吸・過度の疲労(発作後の状態)

発作後(発作後もうろう状態)は混乱・疲労・眠気が強く出ることがあります。発作後の入浴は、お子さんが状況を正確に認識できていない状態で行うことになるため特に危険です。発作後は体調が完全に落ち着くまで入浴を避けてください。


安全な入浴のための基本対策

必ず介助者が付き添う

てんかんのコントロールが不十分な時期は、絶対に一人で入浴させないことが基本です。介助者は常にお子さんから目を離さず、発作が起きても即座に対応できる体勢を保ちます。

浴室の外で待機しているだけでは不十分です。浴槽に入っているあいだは、介助者が浴槽の縁に手の届く距離にいることを徹底してください。

浴槽のお湯の量を最小限にする

お湯の量を少なくすること(座位で腰〜腹部程度の深さに留める)で、万一発作が起きた場合の溺水リスクを軽減できます。浅いお湯でも十分に温まることができます。

さらに安全を優先するなら:

  • 浴槽に入らず、シャワーチェアに座ってのシャワー浴に切り替える
  • シャワーチェアは背もたれ・肘掛け付きで体を固定できるものを選ぶ
  • ベッドの上で全身を洗えるスイトルボディを活用する(後述)

湯温を高くしすぎない

高温のお湯(41℃以上)は体への負担が大きく、血管拡張・血圧変動を引き起こし、発作誘発リスクを高める場合があります。37〜39℃程度のぬるめを目安にしてください。主治医(神経内科・てんかん専門医)に「うちの子はどの温度が適切か」を確認しておくと安心です。

入浴前の体調確認チェックリスト

以下に該当する日は、浴槽への入浴を控え、ベッドサイドでの清拭・スイトルボディに切り替えることを検討してください。

  • 睡眠が不足している・夜間に発作があった
  • 発熱・体調不良がある
  • 直前(当日)に発作があった
  • 薬を飲み忘れた(または服薬時刻が大幅にずれた)
  • 本人が「調子が悪い」と訴えている

これらの状態は発作が起きやすい条件と重なります。「今日は浴槽はやめよう」と判断できる基準を事前に主治医と決めておくことが大切です。


入浴中に発作が起きたときの対応手順

万一に備えて、対応手順を介助者全員が把握しておいてください。

  1. すぐにお子さんの頭を水面より上に保つ:浴槽の中にいる場合は、まず頭部が水に沈まないよう支える
  2. 排水栓を抜く:片手でお子さんを支えながら排水栓を抜き、お湯を減らす
  3. 浴槽から安全に引き上げる:お湯が減ったら、お子さんを浴槽の外・浴室の床または浴室外の安全な場所に移す
  4. 気道を確保する:顔を横向きにして気道を確保する(口の中に手を入れない)
  5. 発作の様子を観察する:発作の種類・持続時間を記録する
  6. 5分以上続く場合は救急へ:発作が5分以上続く場合(てんかん重積状態)は救急車を呼ぶ
  7. 発作が治まったら報告:主治医・訪問看護ステーションに発作の状況を報告し、今後の入浴方法を相談する

浴槽に入らないベッドサイドでの全身ケア

てんかん発作のリスクを最小化しながら毎日体を清潔に保つ選択肢として、**ベッドの上で全身をお湯で洗える介護用洗身用具「スイトルボディ」**を活用するご家族が増えています。

スイトルボディはノズルからお湯を噴射しながら同時に吸引するため、ベッドのシーツを濡らさずに体を洗えます。主なメリットは以下のとおりです。

  • 溺水リスクがゼロ:浴槽を使わないため、万一発作が起きた場合でも溺水の危険がありません
  • 発作時の対応がしやすい:ベッドの上であれば転落リスクが低く、発作後の体位管理がしやすい
  • 介助者の負担が減る:浴槽への移乗・抱え上げが不要なため、親御さんや介護者の腰への負担が軽減します
  • 体調の悪い日も清潔を保てる:「今日は浴槽は無理」という日でも、ベッドで全身を洗うことができます

発作のコントロールが難しい時期に「浴槽は怖くてできないが、体は清潔に保ちたい」というニーズに応えられます。

スイトルボディの仕組みと特長を詳しく見る


医療的ケアとてんかんが重なる場合

気管切開・胃ろうなど医療的ケアがあり、かつてんかん発作もあるお子さんの入浴介助は特に複雑です。こうした場合は複数のリスクが重なるため、訪問看護師・主治医と連携した個別の入浴計画を立てることが重要です。

  • 気管切開がある場合:発作時に頭部が動いても気管切開部位が保護される体位を確保する
  • 胃ろうがある場合:発作後の嘔吐・逆流リスクがあるため、入浴後の体位管理も確認する
  • 酸素療法が必要な場合:入浴中の酸素供給の方法を訪問看護師と事前に決める

医療的ケアのあるお子さんの入浴について詳しく読む


補助金制度について

スイトルボディは日常生活用具給付制度の対象品目です。障害者手帳・療育手帳をお持ちのご家族は費用の最大9割以上が補助される場合があります。てんかんを含む神経疾患のあるお子さんで障害者手帳を取得しているケースでは、申請対象となることが多くあります。

補助金での購入手順を詳しく見る

よくある質問

発作が薬でコントロールできています。それでも浴槽は危ないですか?

薬でコントロールできていても、突発的な発作の可能性はゼロではありません。体調・睡眠状態・服薬タイミングによってコントロールが乱れることもあります。主治医に入浴時の注意事項を確認し、「中止基準」を決めておくことをお勧めします。

てんかん発作が起きたときの対応方法を教えてください。

入浴中に発作が起きた場合はすぐに頭部を水面より上に保ち、排水栓を抜いてお湯を減らしてから安全な場所に移します。5分以上続く場合は救急車を呼んでください。発作後は必ず主治医に報告し、入浴方法の見直しを相談してください(上記「入浴中に発作が起きたときの対応手順」も参照)。

シャワーだけで全身を清潔に保てますか?

シャワーで体幹・四肢を洗うことはできますが、背中や頭を介助しながら洗うのは難しい場面もあります。スイトルボディはベッドで横になった状態で背中や頭も洗えるため、シャワー浴より介助しやすいという声もあります。

てんかん以外にも障害があります。

てんかんは脳性麻痺・ダウン症・重症心身障害など他の障害を併せ持つお子さんに多く見られます。障害が重なるほど入浴の安全管理も複雑になります。お子さんの状態を詳しくお聞きしたうえでご案内しますので、まずはご相談ください。

一人介助と二人介助、どちらが必要ですか?

発作の頻度・重症度によって異なりますが、浴槽入浴を行う場合は二人介助が望ましいケースが多くあります。一人は常にお子さんを支え、もう一人が介助・緊急対応を担う体制が安全です。一方、スイトルボディによるベッドサイドケアは一人介助でも対応しやすくなります。

まずはご相談ください

「発作があるけれどスイトルボディは使えますか?」「浴槽以外の入浴方法を知りたい」——どんな疑問でも対応しています。

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本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。てんかんの管理・入浴方法については、必ずお子さんの主治医(神経内科・てんかん専門医)の指示に従ってください。