低酸素性虚血性脳症(HIE:Hypoxic Ischemic Encephalopathy)は、出生前後に脳への酸素・血流が途絶えることで脳に障害が生じる疾患です。症状は障害の程度によって異なりますが、痙攣発作・筋緊張異常(高緊張・低緊張)・体温調節障害・嚥下機能障害・発達遅滞など多岐にわたります。

入浴介助では、これらの症状への同時対応が必要なため、お子さんの状態に合わせた個別の対応が求められます。

※ 入浴方法については必ず主治医・訪問看護師の指示に従ってください。


HIEの主な特性と入浴への影響

痙攣発作

HIEのある方の多くに痙攣発作が残ります。入浴中の痙攣発作は、溺水・体の転落・体位の崩れなど重篤な事故につながる危険があります。

入浴・清潔ケア前に確認すべきこと:

  • 直近(24〜48時間以内)に発作があったかどうか
  • 発作のパターン(前兆・持続時間・発作後の状態)
  • 発作が起きやすい時間帯・状況
  • 抗痙攣薬の服用時間と入浴の関係(薬効のピーク時間帯との調整)

浴槽への入浴は、発作リスクが高い時期には主治医の許可なく行わないでください。

痙攣のある子どもの入浴について詳しく読む

筋緊張の異常

HIEによる脳障害は、筋緊張の異常(筋緊張亢進=高緊張、または筋緊張低下=低緊張)を引き起こすことがあります。

筋緊張が高い(高緊張)場合:

  • 体が硬く伸展・屈曲しやすく、体位保持が難しい
  • お湯に入ると筋緊張が変化し(緩和・亢進のどちらも)、体位が崩れることがある
  • 皮膚の重なり・しわの部位(腋・股関節・首のうしろ)が洗いにくい

筋緊張が低い(低緊張)場合:

  • 体がぐにゃっとなり、頭・体の支持が難しい
  • 抱き上げ・移乗時に体が崩れやすく、誤った姿勢で気道が圧迫されることがある

筋緊張のある子どもの入浴について詳しく読む

体温調節障害

HIEによる視床下部の障害は、体温調節機能に影響を与えることがあります。外気温・お湯の温度に対して体温が急激に変動するお子さんでは、入浴中・入浴後の体温管理が重要です。

  • 入浴前に体温を計測し、発熱がある場合は入浴を控える
  • お湯の温度はぬるめ(37〜38℃)を基本とし、こまめに確認する
  • 入浴後は素早く体を拭き、体が冷えないようにする
  • 室温(脱衣所・ケアを行う部屋)も事前に整えておく

嚥下機能障害

HIEのある方の多くに嚥下機能の問題があり、誤嚥のリスクがあります。入浴・清潔ケア中は口腔内・咽頭への水の誤嚥を防ぐ体位管理が重要です。

  • 頭部を適切に支え、前屈・後屈しすぎない体位を保つ
  • 顔・口周りに水がかからないよう注意する
  • 入浴後は口腔内の水分・石鹸残りをしっかり拭き取る

褥瘡(床ずれ)リスク

自力体位変換が難しいお子さんは、圧迫部位に褥瘡ができやすい状態です。入浴・清潔ケアは、全身の皮膚状態を確認する機会としても活用してください。

褥瘡予防と入浴ケアについて詳しく読む


安全な入浴方法の選択

浴槽入浴のリスク評価

HIEのある子どもの浴槽入浴は、以下のリスクを伴います。

リスク 内容
痙攣発作時の溺水 発作が起きると体が水中に沈む危険がある
体位保持困難 筋緊張異常により安定した体位が保てない
体温変動 浴槽のお湯と外気の温度差で体温が急変する
移乗事故 抱き上げ・移乗時の転落・体位崩れ

浴槽入浴を行う場合は、必ず2人以上で行い、片時も目を離さないことが原則です。発作の頻度・重症度が高い時期は、主治医の許可を得るまで浴槽入浴を中止することをお勧めします。

ベッドサイドケアへの移行

スイトルボディを使ったベッドサイドケアは、HIEのある子どもの清潔ケアに特に有効です。

  • ベッドで安定した体位(仰臥位・側臥位)のまま行うため、体位崩れのリスクが少ない
  • 浴槽への移乗・抱き上げがなく、移乗事故のリスクがない
  • 万が一発作が起きた場合もベッド上で対応できる
  • お湯の温度・ケアの範囲を細かく調整しながら行える
  • 入浴後の体温低下が最小限(素早く拭いて保温できる)

「痙攣が怖くて浴槽に入れなくなったが、スイトルボディで全身をきれいに洗えるようになった」というご家族もいます。

スイトルボディの仕組みと特長を詳しく見る


HIEのある子どもの入浴時の具体的な注意事項

入浴前のチェックリスト

□ 直近24時間に発作はなかったか

□ 体温は平熱か(発熱がないか)

□ 呼吸・顔色・機嫌は普段と変わらないか

□ お湯の温度は37〜38℃に設定されているか

□ ケアを行う部屋の室温は適温か

□ 緊急連絡先(訪問看護・主治医・救急)を確認したか

入浴中の観察ポイント

  • 顔色・口唇の色(チアノーゼの有無)
  • 呼吸の様子(速くなっていないか・苦しそうでないか)
  • 発作の前兆(眼球偏位・手足のピクつき・体の硬直)
  • 体温変動のサイン(過度の発汗・震え)

発作が起きた場合の対応

  1. 浴槽内にいる場合: 直ちに顔が水から出た状態を保ちながら引き上げる
  2. ベッドサイドケア中の場合: お湯の供給を止め、体位を横向きにして気道確保
  3. 発作の様子(始まった時間・持続時間・身体の動き)を記録する
  4. 発作後は訪問看護師・主治医に連絡して指示を仰ぐ
  5. 救急要請の基準(5分以上の発作、呼吸の停止など)を事前に訪問看護師と確認しておく

複数の医療的ケアが重なる場合

HIEのある方には、気管切開・胃ろう・吸引が必要なケースもあります。医療的ケアが重なる場合の入浴手順は、訪問看護師・主治医(小児神経科・リハビリ科)と個別に確認・文書化してください。


補助金制度について

スイトルボディは日常生活用具給付制度の対象品目です。身体障害者手帳・療育手帳・小児慢性特定疾病医療受給者証をお持ちのご家族は費用の最大9割以上が補助される場合があります。

補助金での購入手順を詳しく見る


よくある質問

入浴中に痙攣が起きたことがあります。浴槽入浴を続けるべきか迷っています。

入浴中に発作が起きた経験があるお子さんは、浴槽入浴の中止とベッドサイドケアへの移行を主治医・訪問看護師と検討することをお勧めします。スイトルボディでのベッドサイドケアは、発作が起きた際の対応が浴槽より安全に行いやすい環境です。

体がとても硬くて、浴槽に入れるのが大変です。

筋緊張が高いお子さんは、体位保持・抱き上げが介助者にとっても大きな身体的負担になります。ベッドサイドケアに移行することで、移乗・抱き上げの必要がなくなります。

お湯に入ると体が緩むのか、発作が起きやすくなることがあります。

温熱刺激によって発作が誘発されるお子さんがいます。ぬるめのお湯を使うこと、または浴槽入浴を避けてベッドサイドケアに切り替えることで発作のリスクを軽減できる場合があります。主治医にご相談ください。

一人で入浴介助をしていますが、万が一のとき不安です。

発作リスクの高いお子さんの入浴介助は、できる限り2人以上で行うことをお勧めします。一人での介助が避けられない場合は、浴槽を避けてベッドサイドケアに切り替え、訪問看護師に緊急時の対応手順を確認しておくことが重要です。


まずはご相談ください

「HIEのある子どもにスイトルボディは使えますか?」——お子さんの状態をお聞きして、安全な使い方をご案内します。

資料請求・お問い合わせはこちら →


*本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。HIEのある方の入浴管理については、必ずお子さんの主治医(小児神経科)・訪問看護師の指示に従ってください。*